山の記録一覧へ

2007年9月1〜2日 南アルプス はじめてのお泊まり単独登山 単発バイト〜仙丈ヶ岳〜甲斐駒ヶ岳

[スタイル]はじめての単独 小屋素泊まり

[ルート]
<1日目>
8:40 日野春駅〜タクシー
9:10 竹宇駒ヶ岳神社〜迷子で戻り
9:25 竹宇駒ヶ岳神社 再出発
14:30 七丈第一小屋(小屋素泊まり)
16:40 夕飯準備〜布団敷き(単発バイト・夕飯タダ食い)
<2日目>
4:00 起床
5:30 七丈第一小屋出発
7:00 甲斐駒ヶ岳頂上
10:00 北沢峠
13:40 仙丈ヶ岳
15:15 北沢峠

[1日目]

目指すは南アルプス甲斐駒ヶ岳〜っ!そして仙丈ヶ岳!?

初めてのお泊まり単独登山(残念ながらテントではなく小屋泊まり)。

どきどきどきどき。心配なのは、登りが苦手なこと。体力がないこと。小屋まで辿り着けるかどうか。。。

朝自宅を出て、日野春駅に着いたのは8時40分。 他に相乗りする登山客もいないので、独りタクシーに乗り込む。登山口のある竹宇駒ヶ岳神社に着いたのは9時5分。 トイレに行って体操して9時10分に出発。

地図を見ながら進んだが、なにやらおかしい。目印の神社が見えてこない。。しまった!早速道を間違えてしまった・・・。 焦りと共に下山してスタート地点に戻り9時25分に再度出発。

焦る。。。地図上の小屋までの時間は6時間半。休憩を入れたら一体何時になるだろう!! さらに気持ちが焦り、ようやく辿りついた神社のわきの吊り橋を渡った後に大切なメモがないことに気付く。はっと振り向くと橋の手前に白いメモが落ちている。来た橋を戻り今度はしっかりメモを持って渡り直す。。。ボロボロな状態。。こんなんじゃだめだわ〜

登りは急登の連続。 他に登山客もほとんどいない。会ったのはキノコ狩りのおじさんひとりと辛そうに歩いている男性の登山客ひとり。

樹林帯で喋る人も見るものもないので、、登り方を研究してみる。呼吸は鼻で。猫のように歩く。リズミカルに。常に一定の早さで。 足の裏全体で大地を踏みしめてゆっくり鼻で呼吸して。。そうやって歩いてみると、自然とリズミカルに歩けるようになる。でも30分登っただけで少し肺に負担がきて足も重くなる。ゆっくり登ったつもりがそれでもペースが早かったのかもしれない・・・体がついていけない。歩いているんじゃなくて呼吸は走っている状態。

今日中に着けないことを考えて、途中で夜を迎えることになったらどうするんだっけ?とりあえずもっている服を全部着て雨具を着てザックに足を突っ込んで寝る!??そんなには寒くならないだろう。。。そんなことが頭の中をぐるぐる回っている。

あまり休憩を取ると時間がなくなるのがコワイので、足が重くてどうしようもないときにだけ5分休憩をした。 休憩してマッサージをして歩き始めると足が軽くなりペースを落とさず歩けた。

途中で、蜂に追いかけられることもあった。ずっと追いかけてくるので冷や汗でびっしょりになり、キャーなんで付いてくるの!と叫びながら急坂を走りったので息も切れる。蜂の巣でも踏んだかなぁ・・・ 後で聞くと、南アルプスには蜂が多いとか。。先に言ってくれ!

5合目近くなるとようやく修験道らしくなって歩きやすい道になった。 鎖場や梯子は、ひょいひょいと行けるところもあれば、泣きそうになりながら気合いを入れておっかなびっくり登ったりもする。

そしてなんとか宿泊する七丈第一小屋に到着できた!! 肩の荷がおりる。時間を見ると14時半。

宿に入るとこじんまりした空間に既に到着した十数人の客がお酒を飲んでお喋りしてまったりしていた。

この小屋には、仙人みたいなおやじさんがいて珈琲をごちそうしてくれると聞いていた。 だけど、受付をした人は50歳くらいのさっぱりしたおじさん。珈琲を出してくれるような人でもない。食事無しの素泊まりをお願いする。

私が寝る場所の2階に案内されると4、50歳くらいの男性が一眼レフカメラを手にしていた。昨年から山にはまっているそうだ。 私が5時間で登ってきたと言うと、自分は足が早いほうだが5時間半で来たので、それは相当早いし誰も一緒に登りたがらないんじゃないの?とまで言われた。 いやいや、たまたま・・・。たまたま調子がよかったのかな?? 前回の北アルプスではたった3時間の登りがとてもつらくひどい筋肉痛になり階段もひとりで下りれなくなり下山に相当な時間がかかってしまった。

予想外に早く着いてしまって夕飯が待ってるわけでもなくやることがない。外へ出てみる。

水場があり、「飲めるんですか?」と台所の出口で一服している宿のおじさんに聞くと、何も言わず水場の看板に指を指す。なんだい無口なおやじ!と思いながら、看板に目を向けると水質が書いてある。飲める〜!置いてあったコップに4杯ほど一気に飲む。「美味しいですね〜!」本当に美味しかった!! この小屋に住む仙人の話をしたが、相手にされず。

その場を離れようとしたら、
「夕飯の手伝いしない?」とおじさん。
「え??」
「9千円あげるから。」
まじ??やったー
「やるやる!!」と即答。
暇つぶしが出来ただけでなく、バイトもできるとは!
「じゃ4時40分に来て。それまで休んでて。」とカゴメ野菜ジュースを投げてよこした。

手伝いするなら名前くらい聞いておこうと思ったが、聞いても教えてくれないので、仙人さんと呼ぶことにした。写真も撮らせてくれないのでシャイなひとかもしくは本当に仙人なのかも?

それにしてもラッキー。もしかしたら夕飯もただで食べれたりして〜♪部屋に戻って時間まで地図を眺めたりストレッチしたりした。

4時40分に台所に行くと、30枚のお膳が並べられていた。
おおっ!こういうのTVの旅館のドラマとか、駅弁づくりのドキュメンタリーとかで見たけど、なんかわくわくするね〜

私の仕事は、お膳に料理を並べること。 30人分だから早くやらなきゃとせっせと置くと、おじさんが怒る。

「そんなんじゃ駄目だ。せめて見た目だけでも美味しくみせなきゃだめなんだ。」
そっか・・・。おじさんのお手本通りに、沢庵、らっきょ、レタス、ポテトサラダ、揚げたてのコロッケや揚げ物、煮物、刺身、オレンジ、葡萄、、、を盛りつける。

無口だと思ったおじさんだけど、山の話、こだわりの料理の話や包丁研ぎの話、私の下界での派遣という仕事の話、などお喋りしながら準備を進める。 せっかく温泉に入りに下山してもまた登ってきたら汗だく。とか。山好きで山小屋を経営したいという人がいるけど、山小屋を経営したら他の山へや行けない。。。とか。実際おじさんはしばらく他の山へ行ってないらしい。先週は70人きててんてこまい。1週間で3人しか来ない日もある。とか。小屋を初めて12年とか言ってたかな。

「みそ汁の味見をして」というので味見すると、
「もやしの味しかしない。」そう言われたおじさんは味噌をたっぷり追加する。「お客さんの反応が悪かったらあなたのせいだからな〜」「そんな〜」

準備が出来、待ち通しのお客さんのところへお膳を運び、 私がご飯、おじさんがみそ汁をもって渡す。

「みそ汁はこの子が作ったから文句があったらこのこに言って下さいね。」とおじさん。。 それにたいして「味噌汁おいしいよー」とお客さん。 どうもどうも。ほっ、よかった。

私もお客さんと一緒に夕飯をいただいた。 きのこたっぷりの味噌汁は味が濃くて疲れた体にしみて美味しかった。

「美味しい美味しい」と食べるお客さんに「よっぽどまずいもの下界で食べているんだな。」と、おじさん。毒舌だけど、人がいい。みんなが食べている間はずーっと立ったままでおかわりをよそってくれる。

ご飯でおなかいっぱいになった後は、TVで翌日の天気予報を見る。(あんな山の上の小さな小屋でもTVがあった) そして、おじさんがみんなの分の布団を敷き始めた。シーツ代わりの毛布もピッチリたるみがないように敷いていく。わたしも悪いので布団を敷くと姑のように目を光らせ布団のたるみがないか見てくる。。。 それにしても山小屋で寝床を作ってくれるなんて、やっぱり仙人みたいなおじさんだ。と思った。 3ヶ月100万円で人を雇うようなことを言っていたので思わず転職を考えてしまった。というか嫁入りか!?

食器の後かたづけは翌日にするようだった。私の仕事は夕飯を食べるまえに終了していた。おじさんはどこからか、貴重なあんぱんとオレンジジュースを持ってきて渡してくれた。どちらも持っていて夕飯分のパンも食べていないのでさらに荷物になるけど、一度受け取ったものをお返しするのも悪いので有り難くもらった。

夜7時半過ぎ、外に出る。夜空の近さに感動し、ベンチに横たわり仰向けになり、ずーっと星を眺めていた。だんだん星が近くに見えてきて、飛行機や人工衛星や流れ星が飛んでいくのを見ていた。手を伸ばすと星を掴めそうだった。

8時就寝。


[2日目]

4時起床。

「仙人さん、やっぱり明日仕事休んで仙丈ヶ岳までいこうと思います。お世話になりました〜」

甲斐駒へいくなら仙丈までいかないともったいない。と色んな人に言われたので、帰路のバス停のある北沢峠を通過して仙丈ヶ岳までいくことに決めていた。 だけど仙丈ヶ岳へ行くにはもう一泊しないといけない(休暇届けは出していないけど・・)

5時20分に小屋を出て歩き始めると、小屋泊まりで同じく甲斐駒を目指すおじさまおばさま方に、「あれ?味噌汁のお姉さんじゃないの。」とか「お姉さん、お客さんだったんだね〜?」とか「お嫁さんだと思ってたら違ったんだね〜」とか引き留められお喋りしながら頂上へ目指す。

7時に甲斐駒ヶ岳頂上に到着。青空は一部見えるが、ガスで周りは何も見えず。。下山。

下山と言っても、登りもある。 ゴツゴツした岩場が滑りやすそうなので慎重に足下を見て登っていた。というか足元しか見ていなかった。

うわぁわーなんじゃ〜〜〜〜 !!!!!!!!!!

ものすごい衝撃。
突然誰かに殴られたような。。。マンガみたいに★星☆が見えた。
一瞬何が起きたのか分からず、右上を見ると大きな岩が私が行こうとしていた方向に突き出ている。 当たったのは右前頭部。頭を押さえしばらくうずくまる。10分くらいうずくまっただろうか。

それにしても今まで経験したことのないような衝撃。 今は大丈夫だけど時間が経ってから死んだりして・・と考える。。。 右目がどうも重たくて見えづらい。 顔をマッサージしたり動かして色んな表情を作ってみる。 顔がゆがんだようだ。

とりあえず、バス停のある北沢峠まで目指そう。 そう思って右前頭部を押さえながら歩き出した。

10時北沢峠到着。 頭の調子はだんだん回復してきたようだし、怪我が悪化して山に登れなくなるのも嫌なので、今歩けるときに歩こうと思い仙丈ヶ岳に行くことにした。

バスの時刻を見ると、最終バスは15時30分だった。 地図を見る。 地図上では仙丈ヶ岳まで行って帰ってくると約7時間。バスの時刻まであと5時間ちょっと。 小屋のおじさんが、私だったら仙丈ヶ岳まで行って帰ってくれるんじゃない?と言ってたのを思い出す。 そっか。もし昨日のようなペースで歩けたら、最終バスに間に合うかもしれない!?

よし行ってみよう!! 駄目だったら、小屋で泊まればいい。

北沢峠で甲斐駒ヶ岳のバッジを買って仙丈ヶ岳へ向かう。 登りは登山道が崩れていて回り道になっているところがあったり永遠と続く沢の道がつらかった。足が重たく何度も立ち止まって、轟々と流れる沢の音が耳障りだった。。。

登りは結構きつかった。頂上までが妙に長い感じがした。風がとても強くガスで周りは真っ白。頂上に着いたら雨具を着ようと思っていたのになかなか着かず、いつの間にか髪の毛から水が滴っていた。

風邪引きそう。他に誰もいない。心細くなっていたら、雷鳥が4羽、親1羽ともうぬくぬく大きくなった子が3羽現れてくれた!ホントにいつも雷鳥や花には助けられているよ。ちょっと元気になって登ったらようやく頂上が見えた。頂上にも誰もいなかった。。。こんな天気にわざわざ来る人もいないのか・・・

頂上に着いたのは1時40分。1時に着けば何とか頑張って3時半にはバスに乗れるかもと思っていたけど、結構厳しい時間。とりあえず腹ごしらえと、5分だけ休憩をとってアップルパイを食べる。 下山は地図上では40分、40分、1時間20分。 走って帰るしかない。。間に合わなかったら小屋泊まり。 とにかく怪我をしないように、道を間違わないように下りよう。

走って下山すればいいと思ったけど、途中小仙丈ヶ岳なんていうものがあったりして登りがくるともう諦めモード。だめだこりゃ〜。でも下りになると修験者のように走り出した。修験道を登ってきたのでまるで自分に修験者が取り憑いたようでコワイと思いながら、、凄い勢いで地図も見ず時計も見ずに飛んで下山した。。。そのうち分岐の標識が現れるだろうと。。

ようやく標識があった。 見ると5合目。時間は2時半。 40分40分のところを45分で下りてきた。 とうことはあと1時間20分のところはもしかしたら1時間で下りれるかもしれない!?

ちょっとドキドキしながら、さらに駆け下りる。 2時45分に4合目。3時に3合目・・・
1合=15分?バス乗り場は一体1合目?0号目??とか変な計算をしながらどんどん下りる。本当に間に合うかも??

もう駄目と思いながら出来るだけ走ったり早歩きして、最後に猿を見かけ悪戯されないかオロオロしながらバス停に向かって下りてきた。

15時15分、北沢峠に到着。
一人心の中で喜ぶ。バスのチケットを購入して、甲斐駒ヶ岳のバッチを購入した小屋へ行ってccレモンを飲んで、今度は3032M仙丈ヶ岳の雷鳥付きのバッジを購入。小屋の兄ちゃんが今日あれから登ってきたんですか?とちょっとびっくりしてた。

頭を打ったせいか思い出せないおばちゃんたちに「あの子さっき会ったわよね、どうもこんにちわ〜。」と見送られ3時半のバスに乗り、途中乗り継ぎ甲府駅へ向かった。

帰りのバスで、頂上で濡れたせいかとても寒く、頭を打ったからか風邪かバス酔いか知らないけど吐き気がして具合が悪くなった。 何も食べたくないが無性に醤油のスープが飲みたく、甲府駅に着いてから立ち食いそば屋に入った。240円のかけ蕎麦がとっても美味しかった。

****

翌日、朝起きると打った頭が痛い。右目右耳右頬右前頭部に違和感がある。職場に行ったけど、、職場の人が「おじさんもおばさんも頭を打ってそのときは何ともなかったんだけど1週間後に亡くなったよ。」というし私もそれを心配してたので、午前中休んで急遽病院へ行った。

医者にどこの山へ行ったの?と聞かれたので甲斐駒ヶ岳と答えると、??な顔をして、データベースに「山へ行き岩に頭をぶつけた・・・・」と書いていた。山好きの医者が多いと思ったけどそうでもないのか、、と余計なことを考えながら生まれて初めてCTというものを受けた。

「まあ大丈夫じゃないの?内出血もしてないみたいだし。年寄りだったらそのうち手や足がしびれてくる場合もあるけれど。若いからそんなこともないだろうし。」と医者は言う。 それにCTの画像は、素人が見ても全く複雑でなくこんなんでわかるの??と疑問になる画像だった。。。 不安・・・。
そうね、、手足がしびれたらまた検査しにくるかな。。。 周囲の人には「一週間後に死ぬかもしれないのでよろしく」と伝えておいた。

とりあえずまだ生きているけど、まだ1ヶ月経っていないのでちょっと不安。 顔のゆがみは治ってきているだろうと思うしそれでも山歩きはやめないだろう・・・。

ちょっとがんばりすぎた単独登山でした〜無事で何より。


竹宇神社からのつり橋

黒戸尾根

黒戸尾根からの眺め

修験道らしい道

ただ飯 キノコ汁最高!!

朝の景色

もうすぐ甲斐駒ヶ岳

甲斐駒ヶ岳山頂





雨の中 仙丈ヶ岳
inserted by FC2 system