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2008年6月1日 山梨幕岩 天王岩〜視覚障害者&クライミング

電車で爆睡。頭はスッキリ! JR中央線竜王駅に到着

目指すは、初の山梨幕岩! しかしただ岩登りをしにきただけじゃないのだ。

今日は視覚障害者と岩登りをするのです。
色々ネットで調べてみたけど、いまいち実感がわかない。 それに自分が好きなクライミングでお手伝いができるなんてなんて幸せなんでしょう。 ワクワクドキドキ♪

おはようございます! 初めてのボランティアです。よろしくおねがいしまーす!

担当者は、サバサバしたお姉さま。 主催者の代表にもごあいさつ。彼自身が視覚障害者である。

今回講習生は4名。うち視覚障害者は小学6年生の男の子のみ。 ボランティアは経験者1名に、初心者の私と白馬からはるばる来た男の子。

車は2つに分かれて、幕岩へ向かうことに。 お姉さまの車の助手席に乗りこんだ。 彼女は行動が早く、スピードも速いが、さらに口も達者だ。 車の中で色んな話を聞かせてくれる。

「視覚障害というと何も見えなくて暗闇だと思うだろうけれど、 実際は、たとえば真ん中だけ見えていたり、反対に真ん中だけ見えなかったりするのね。 弱視っていうんだけど」

HPで見た情報を思い出し、うんうんとうなずく。

「一緒にお話をしててね、何かの説明をするときに、 『あの赤いのが〜』なんて言うから、『えっ!?』ってびっくりして どうして色がわかるんだろうって。そしたらこの間あなた言ってたじゃないって。 全部耳から聞こえたものを情報として覚えているのよね」

うんうんうんとうなずく。

車は町を離れ、相当山深いところまで入っていく。 山は荒れていて、道が陥没していたり落石が多い。

「落石注意!ってよくあるけど、どうやって注意しろっていうのよねぇ。」
「落石って上から落ちてきたものじゃなくて 落ちている石に注意しろってことだって言ってた人もいたけど」

ふむふむ

しばらく落石の話が続く。

「落石なんて注意するにもできないって」
「石にも意思があるとか〜はは」
「こだわりますね〜(笑)」 (でもこのスピードなら落ちてくる石より落ちている石の方が十分怖い。)

相当飛ばして1時間で幕岩へ。 車がないとどうやっても来るのが厳しそうだ。

岩場までのアプローチはそれほど長くない。 けど、結構急斜面があったり片足しか置けず下は崖みたいな細さの道があったり 視覚障害者の方は一体どうやっていくんだと思ったけど、 そういうときこそボランティアの役割。

といっても私は全く何をすればいいのか、何を言ってあげればいいのか さっぱりわからない。。。

とにかく長年ボランティアをしている方の様子を見てみる。
「そこ左切れてます。斜面です。倒木です。真ん中にワナあります。 登ります。左寄りで。頭上に倒木です。」

私も真似して言ってみる。
「ロープあります。根っこがいっぱいあります。50センチ降ります。ワナあります。」

ワナって!? 確かに全ての障害物は、それは視覚障害者にとってワナだよね。 山じゃなくても町でのワナは例えばあの工事の三角のポールだそうだ。

ようやく岩場に到着。それにしても人が多いこと! みんな岩バカだな〜(笑)こんな山奥まで来て。

私が腹減った〜とおにぎりに食いつきはじめたら もうすでにお姉さまがリードでガシガシ登っていく。 かっこよすぎる。たくましい!!

みんながみんなトップロープでそれぞれ登れることろまで頑張って登る。

6年生の弱視の男の子は、 新しいハーネスとシューズで大喜びらしく鼻歌を歌っている。 風邪で咳がとまらなというのに、ガンガン岩をよじ登り 落ちても何度も挑戦していた。

視覚障害の方のクライミング、といっても何ら変わりはない。 クライマーが自分の体をうまく動かして、ひたすら上を目指し登る。 そしてホールドの在り処や身体の振りは周りの人たちがアドバイスをする。

視覚障害者の方と一緒にいる時間が長くなるほど、 彼らが目が見えないんだってことを忘れてしまう。

クライミングは私より断然うまいし、 とっても明るいくて一緒にいるだけで面白いひとたち。 お手伝いをするはずが、かなり楽しませてもらった。

結局、お昼をゆっくり食べる時間も作らず 夕方4時半まで登りつづけた。

ぽつぽつと雨が降り始め、 車に乗り込み下山する。 またお姉さまの助手席へ。

「それにしても珍しいわよね、 あなたみたいにこういうことに興味あるなんていう人は」
「私も彼もたまたまそういう状況になって初めてそういうことに関心をもつくらいで そうでもしなかったら一生関わりなかったと思う」とお姉さん。

「全く違う環境の人と接する機会が欲しかったんですよ」

「でもそれだったら私なら、もっと芸術家みたいな人と接したいけどなー」

おしゃべりをしながら竜王駅に無事到着。お疲れ様でしたー!

私は、代表者と電車で帰ることに。
視覚障害のある方と一緒に電車に乗るなんて初めてなので 妙に緊張する。 障害者補助ということで、半額の切符を買ってくれた。

私は次次出てくる彼のいろいろな小道具に興味深深。

@『音声電話』
彼が一所懸命に携帯に耳に当てているので 電話出ないですか??と聞くと、メールを打っているのだという。 ドコモから出ている富士通の携帯?らしい。 へ〜!!

A『白杖』
コンパクトに縮められてかばんに収納できる白杖。 たいていの人がこれを普段使っていて、 お店に入るときや電車に入るときには小さくたたむのだとか。

B『ルーペ』
携帯電話に押し付けて携帯電話の文字を見る。 相当倍率が高くないと弱視には厳しいな。

まだまだたくさんあるそうだ。 彼のかばんはドラえもんのポケットだ〜夢が膨らむ。

駅のホーム、演歌みたいな口調でアナウンスが流れた。
「まもなくぅ〜甲府行きの電車がまいりますぅ〜」

「こういうアナウンスは、みんな好きなように言っているから 全部機械でアナウンスを流せばいいのに、、」と視覚障害をもつ代表。

「でも個性があっていいんじゃないですか?味があって。」と私。

言った後に気づいた。
そうか、かれらの情報は視覚では得られない分、 すべて聴覚に頼っているんだった!!!

なんの不自由もなくしているように見え、 なんの問題もなくおしゃべりし続けてたら 障害者の観点を忘れてしまっていた。

まだまだ視覚障害者にとってはくらしにくい世の中だ。 ドラえもん小道具よろしく頼むよ!

福祉ではない。福祉にしたくない。ただ目がみえない、それだけ。

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