[ member ]
Itさん、めろ
[ gear ]
テント、ダブルアックス(カジタ50、グリベル55)、スノーバー3(未使用)、ザイル50×1、カム(飛騨尾根)、250ガス×1
[ ROUTE ]
5/1
0800 松本
0840 新島々
0945 上高地
1400 岳沢小屋
スタンディングアックスビレー練習、スノーバーアンカー作成練習etc.
5/2 11h行動
0530 岳沢小屋
0620 コブ沢右の支流へ
0740 マイナーピーク
1100 コブ下部登攀開始
1215 コブ基部登攀開始
1255 コブ
1345 懸垂開始
1625 コブ尾根の頭(幕営)
5/3 9h行動
0640 コブ尾根の頭〜β沢(αルンゼ)下降
0710 T3辺り 0730
0830 T2電光クラック
1100 ジャンダルム
1200 コブ尾根の頭〜西穂高方面へ
1335 天狗のコル〜天狗沢へ1350
1420 岳沢
1545 上高地
[ info. ]
・飛騨尾根T3取りつきは、「日本の岩場」情報ではコブ尾根頭から15分、他の記録では1時間とか、いろいろ。T3がどこなのかも明確でない。我々は30分ほど下ったあたりから取りついた。
・飛騨尾根T3より上は、岩稜帯は雪がほとんど無く、気温が高く、アイゼン外し、手袋外し、ピッケル不要、冬靴で快適に登れた。
・ジャンダルム〜天狗沢取りつきは、一部雪が残っている部分はアイゼンが必要だが、他はアイゼンを脱いだ。ガレ場や危険な個所が多い。
・コブ尾根マイナーピーク懸垂下降点は、雪が多いと、スノーボラードでの懸垂となるらしいが、今回は小屋の情報で懸垂用スリングが出ているとのことだった。スノーボラードは次回の課題。
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先週の白馬主稜の雪の少なさから、その後1週間快晴予報で雪の状態が期待できないため、鹿島槍東尾根の計画案は止める。
そこでItさんオススメクラシックルートへ。
飛騨尾根は特にアプローチが遠く、なかなか行く機会がないルート。
今は手に入れるのが難しい登山体系や日本の岩場の資料を眺め、面白そう!という気持ちの反面、飛騨尾根へ下って取り付く残雪期の記録をネットで見つけられずなど不安要素も多い。
そもそも西穂〜奥穂間は、無雪期でも歩いたことがなかったところで、未知の領域なのだ。
不安が多いならとことん調べるってのが事前準備にするのだが、多忙で時間切れで資料を一読したのみで調べられずあきらめ、、、
Itさんが結構調べてくれてたので甘えて、、、またもや食当すらお任せして出発。。。
体調不良で1本遅らせてもらった電車に乗るべく、朝に急いで準備。
とりあえず時間はないが、いつもの様に、万が一帰って来れなくても恥ずかしくない様に、少しだけ部屋を片して家を出る。
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5/1 上高地〜岳沢
定期の腹痛で服薬しながらのアプローチで腹を抑え歩いていたが、すれ違い様の男女2人パーティに名前を呼ばれる。
振り向くと、昨年一度お会いしたことのあるクライマーズクラブの方で、1泊2日で前穂北尾根にいってきたとのこと。
最近山にいくと知り合いが多い。翌日コブ尾根で会ったガイドの方にも共通の知り合いがいた。山に行くとみんな知り合いに見える今日この頃。
北尾根は雪は意外にあるとのことだった。この2日後に友人の会の40代女性が北尾根の落石で亡くなられたのだが。自分も北尾根に行きたい気持ちもあったので、交わせない落石を受けていたのは自分だったかもしれない。(後に落石は人的なものの可能性がある
との見解あり。後続者やルート状態を考えずに、落石をしながら歩く登山者が増えている様子。)
岳沢小屋は初めて。
昔縦走で通ったときは、小屋が無い時だった気がする。小屋はまだ比較的空いていて、世間一般的な明日からのGWに向けて、スタッフがテント場を整備している。
小屋に到着したときには、服薬効果で腹痛治まり、アルコール中毒様の相方は早速ビールを購入していたので、そのビールを少し奪いテラスで昼寝。あったか〜い!
昼寝を続けたいが渋々テントを立て、訓練へ。というか前回あやふやだったスタンディングアックスビレーの確認やデッドマン、スノーバーの使い方をしっかり確認。
岳沢には奥明神沢から前穂へいく登山者やスキーヤーなどが多かった。
日が陰ると寒くなってきたが、夜間は3シーズンシュラフで十分な温かさ。相方はシュラフ無しで上下ダウンで寒さを凌いでいた。
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5/2 コブ尾根〜コブ尾根の頭
コブ尾根へ行くパーティは先行に2パーティ。彼らは、直接コブに乗り上げるらしく、マイナーピークからコブを目指すのは今日は我らが最初のパーティだった。トレースは無い。
コブ沢から右の支沢へ入るが、下部は3mほど雪が解けて沢になっていて、雪を踏み外し思わず片足ボチャン・・・。
稜線に出るまでも傾斜の強い雪稜の下で沢の流れる音が聞こえると、こりゃ怖いと思い、雪に振動を与えない様に忍び足で遠ざけるように歩く。
雪はアイゼンがよく効いて歩きやすいが、傾斜が強いため、日が昇り雪が融けていくにつれてアイゼンが効きづらくなり、滑落しないようにたまに下を見て、自分を怯えさせながら確実に歩く。
マイナーピークに着くと先行パーティがコブへ直上への雪陵を登り、すでにコブの下部の岩稜帯に取り付いているのが見える。
マイナーピークから懸垂は、ピッケル片手に斜め懸垂で雪稜に下りる。トラバースしてある傾斜のある雪稜から念のためロープを出してコブ下部へ。
いまいち取り付きがわからない、先行は右側を直上していたようだが、It氏にまかせて、左側からルートをとる。
セカンドで行ったが、浮き石多いしアイゼン手袋で結構きつかった、コブの核心より難しかった。
そこからコブ基部へは、自分がリード。傾斜の強いトレースのない雪壁を乗り越え左にトラバースして取り付く。先行は一体どこから登ったのだろう。。。
夏にも多く登られているようでハーケンや古いスリングがあちこちに見られるが、クラシックルートに忠実に、左の岩壁を登る。ガバが多く比較的快適に登りコブの上に立つ。
コブに着いて安堵していたのも束の間。すぐにナイフリッジ、そして懸垂地点への怖〜いクライムダウン2回。
懸垂地点から見下ろすと、行く手の雪が崩れ落ちるのが見える。後ろから来て先に行かれた2人パーティが足をとられ苦労している。
我らはその後、彼らの行った後の急傾斜の締まりの悪い雪稜の階段状になったトレースをありがたく追う。これがラッセルだったらかなりシンドイ!
しかしコブ尾根の頭への道は遠い。
まだかまだかと思いながら、雪陵、岩稜を何度も乗り越える。
もう心身疲労。
そしてようやく着いたコブ尾根の頭。
感動!360度北アルプスの山々。
しかし思った以上に時間が掛かってしまった。空身だったらだいぶ時間が変わっただろうか。
しかしトレースがあって天気がよかったから来れたものの、本来のGWの雪の状態や天気ではきっと難しく、途中ビバーグになったのではと思う。テントで日帰りでないため休憩多く取りのんびり来たのもあるが。
先に到着したパーティも今日はジャンダルムを越えて穂高小屋へ行く予定だったが、ここでビバーグするとのこと。
このパーティのリーダーは71歳の山岳ガイド兼山岳スポーツ系協会会長のSクラブのクライマー、唯一登っていなかったルートであるコブ尾根に来たかったのだという。
コルセット巻いてオールリードで強すぎる。
コブ尾根、クラシックルート、とっても良いルートだった!もうお腹いっぱい!
夕方は一時ガスで真っ白になり、期待した夕焼けは見れなかった。
夜間は風が吹き寒くて眠れなかった。やはり稜線上の幕営は雪で風よけを作るべきだと思った。テント内に風よけに物を置くと、少し寒さが和らいで眠れた。おかげで翌朝は寝坊。。。
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5/3 コブ尾根の頭〜飛騨尾根〜ジャンダルム〜天狗のコル〜岳沢
5時半には出発する予定だったが、朝方に寝付けたのもあり、寝坊して5時起床。すでに辺りは明るい。
急いで準備して、テント等撤収してデポして出発。
飛騨尾根T3への取り付きのため、ルンゼを下る。取り付きがいまいちわからないが、稜線より30分、標高150m下った辺りT3と思われる場所から岩稜に取り付く。
飛騨尾根の下から登ってくるパーティが見える。
1P目メロリード・コンテでいける感じ。2P目Itリード、巻いて行けるが、左上のクラックルートが面白い。
ようやくT2電光クラック、Itリード。出だしは簡単で快適だが、後半のピナクル右下のトラバースがかなり悪い、ここが核心。足場がないので下部のガバを掴んで、
それにぶら下がる感じで緊張の一瞬で超える。
アー怖かった。It氏も落ちるかと思ったとのことだった。後続のガイドパーティは、この核心手前でピッチを切って確保していた、それ正解。そうしないと
ロープの流れがとても悪く確保出来ない。
次の快適なピッチをリード開始し少し振り返ると、後続トップが核心で苦労している。
下からトラバースすると良いことを伝えようとしたが、T2の取り付きやその前のピッチでも、
そのパーティのリーダーらしき人は「此処はロープなんて要らない」とか何度も主張していたので、そんな力のあるパーティに言わなくても良いし、
必要ならビレーヤーのItさんが何か言ってあげるだろうと思って先に向かって登り始めた。
直後、後ろから悲鳴が!
振り向くと後続トップがピナクルから滑落していく・・・頭部を打ち2バウンドくらいしてガラガラと15mほど落ちて止まった。
一瞬時が止まったようでドキドキする。
「大丈夫ですか!」と叫ぶ。下降して助けにいこうと思ったが、身体が動き返事がある。
そして少しすると自力で這い上がってきた。よかった。。。
核心部が超えられず上のピナクルにスリングをかけてテンションを掛けようとしたが、ロープ不要と主張していたビレーヤーはそのとき既にビレーを解除していたようだ。
そのためそのまま滑落したと。
だいたい山岳事故の多くはそういうものなのかもと思ってしまった。
あとからIt氏とこの件についていろいろ議論、そんなにルートを軽視するならここを選ばずもっと難しい所に行けばいいと、確かにそれも言える。
そして滑落した方はロープは不要と言う相方に、ロープ必要と反論していた様子もあり、結局は弱い立場のものがいつも犠牲になると思った。
でもその人はそんなパートナーの性格を知っていたはずなので、
見えない場所で故意にテンションを掛けたのはかなりのチャレンジャーだと思った。
後から知ったけど、ネット上で先月のコブ尾根の記録を読んでいた時に遭難寸前だったパーティがいたが、
実は今回滑落したパーティのようだと写真で分かった。
山は平等だと本当に思う。それは、なるべくしてなった結果に過ぎない。もちろん自分の山行にも言えること。
命に別条ないが手足に怪我を負ったようで、このパーティは巻けるところは巻き、コンテで先に登って行った。
心地良い緊張の数ピッチ越え、ジャンダルム山頂へ。最高の景色。
ヤッホー!
隣の穂高岳には登山者が多数いた。
しばらく景色を楽しみ、山頂から下りると、一気に周りはガスに覆われ、いよいよ天気が悪くなってくる様子あり。それにしてもタイミングよすぎる。登ってる間はずーっと快晴だった。
コブ尾根の頭で荷物回収し、西穂高方面稜線へ。奥穂〜西穂は実は夏にも歩いたことが無い。厳冬期に来てみたいもの。
一般道と思い甘く見ていたら結構悪い。アイゼンでのガレ場は久しぶりで超歩きにくい。。ほぼ雪がないので途中でアイゼンを外すと膝の負担が少なくなって、もっと早く外すべきだったと思った。
しかし後で出てきた際どい雪渓のトラバースを、アイゼンを外したことを忘れ取り付いてしまい焦る。落ちても大した高さでもないが、怪我する恐れ大のため、
絶対落ちない様に超慎重にクライムダウン。。。
コブ尾根〜飛騨尾根で結構な疲労だったけど、最後まで気を引き締めないとね。。
何事も無く岳沢へ下りる天狗沢に到着。
天狗沢は傾斜が強いものと心配していたが、実際はほとんど傾斜なく快適に尻セードでき、標高差600mを30分で下ることができた。疲れが出てきていたので天狗沢が簡単でほんとよかった。
上高地に下りるまでどこまでも、登ってきたコブ尾根やコブの頭を眺められてなんか嬉しい。
いい山だった!
3日間最高の天気の下、これまでで一番最高のGW山行になった。良いルートをチョイスしてくれたIt氏に感謝。今度雪の飛騨尾根に来る時は、新穂高からジャンダルムを超えて穂高へ行きたい。
ところで今日は昨日に続き、後続が山岳ガイドのパーティで、名だけは知っていた成田さんという方だった。つい最近譲ってもらったずっと欲しかった私のカジタの
ストレートのピッケルを褒めてくれたので、クオークより軽いと伝ええると驚いていた。(ホントか?)成田さんも先週ガイドで白馬主稜に行ったらしく雪が少ない話しをしていた。
下山後、300円で入れる源泉掛け流しのお気に入りの風呂へ。
毎年GWに槍ヶ岳に登っているという60代くらいの女性と湯につかりお喋り。
今年の雪の少なさに驚き、ピッケルもアイゼンも使わなかったのは初めてとのことだった。雪山ということでそれなりの緊張感を味わうことを楽しみにいったのに、
でも無事に帰れたから、と自分を納得させている。山岳会は入ってたけど色々面倒くさくて、昔はクライミングしてたけど歩くだけなら一人でも十分いけるからと。
まさにその気持ち、彼女に同感しながら、30年後の自分の姿をみたようだった。
暖冬で雪が少なかったのか、それとも雪解けが早かったのか、GWとは思えない1ヶ月早い初夏並みの山だった。
天気は非常に安定していて悪天を心配することもほぼ無く、計画通りの大満足な山行ができた。
今期最後の雪山だった。次は源流だ〜
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●温泉山小屋ともしび
(http://www.yamagoyaonsentomoshibi.jp/)
正月に来て以来2回目。小さな商店のおじちゃん、おばちゃんがやっている1泊1000円のライダーハウス。源泉を清流で薄めて温度調整しているので、温度が熱い時やぬるい時はおばちゃんに言うとすぐ調整してくれる。
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●ルートの詳細がわかりやすい
(Itさんのブログ)