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2015年5月17-18日 / 北アルプス 餓鬼岳

[ style / gear ]

solo / ピッケルKAJITA、12本アイゼン、30mザイル、ハーネス、テントエアライズ1 、ストック(1本壊れていた..) 、3シーズンシュラフ

[ ROUTE ]

5/17 9h

0840 信濃常磐駅
0908 白沢登山口
0940 紅葉の滝1140m
1005 魚止の滝1020
1045 最終水場
1200 ガレ場〜雪渓1230
1305 大凧山2079m
1515 百曲がり
1720 支稜線
1807 餓鬼岳山頂
1815 餓鬼岳避難小屋(幕営)

5/18 7h

0600 餓鬼岳避難小屋
0655 百曲がり終了
0805 大凧山
0850 雪渓〜ガレ場終了
0940 最終水場
1025 魚止の滝
1135 白沢登山口
1210 唐子山の神、鳥獣供養の碑
1225 常磐山の神
1315 信濃常磐駅

[ info. ]

・信濃常磐駅から白沢登山口タクシー約2500円
・今年は雪が多かった!が、雪解けは早かった!だから北面だけはやはり残雪が多い!

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何ヶ月ぶりだろう、、、久しぶりのソロ泊登山へ。たまにはひとりで山に会いに行きたい。

近く電車でいける場所。今年は雪が少なそうで、5月といっても五竜岳や燕岳なんかも人が沢山入っているみたいだし、 のんびりソロテントしたいけれど、階段歩きにいっても面白くない。人があまり入っていないところ、面白そうなとこへ。

燕より少し北にある餓鬼岳に行こうと思いつく。以前山仲間が餓鬼に行ったと言っていたが、梯子や鎖場が沢山あって面白そうだ。 雪解けも早いだろうから大丈夫だろう。駅から登山口も5kmくらいなのでタクシーでいってもそれほど料金かからないだろうし。

早朝に出ようと思ったが、前夜いろいろあって寝坊。7時に起床、でも9時には登山口に到着。松本って素晴らしい。

残雪期5月の餓鬼岳の記録はあまり見つけられなかった。唯一あった記録を読むと結構苦労している。 滑落して軽症を負ったり、 道迷いで遭難しかけて辿り着けなかったとか・・・。

餓鬼岳に行くのは前日に思いついて調べたので、そんな記録をみてビビり気味。

一応ロープとハーネスは持ったものの、 朝、山に向かう電車の中でも餓鬼岳にいこうか、それとも白馬方面まで乗って登山者が沢山入っている山にいこうか悩んでいたのだ。 今回はソロでのんびり歩き、他の登山者とテント場でまったりしたかった気持ちもあった、、でも道が面白いところにいきたい。

結局駅から近いところと悩み、予定通り餓鬼に行くべく信濃常磐で下車。電車内から呼んでおいたタクシーに乗り込む。

いきなり大町弁で話しかけられる。「しばらく」とかって意味だったようだけど忘れてしまった。。。しばらく雨が降らないね〜みたいな感じだったかな。

大町の歴史好きで、地元のいろんな話しを楽しそうに話してくれた。

もう避難小屋は開いているのか?と聞かれ、まだだけどテントだからどこでも泊まれると伝えておいた。楽しそうなおっちゃんだった。

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白沢登山口からしばらくは雪はない。穂高や白馬の前回の状態を思い出し、この分じゃ稜線まで雪がないだろうな、アイゼンも使わないだろうなと思う。

橋や鎖が冬季は外されているということだったが、手摺りだけが外された梯子なら足場があるので注意すればいけるし、撤去された橋は3メートル位なので、 徒渉があっても難なく行ける。

それでもよそ見をしたら滑落してしまう崖のトラバース箇所が多くて気が抜けない。

尾根上を行く古い登山道と代わって、現在の夏道は細かくギザギザに巻いていくため、いったいどの方向へ進んでいるのかわかりづらい。

ネットの記録で道迷いしたパーティは、今より雪はあり古い道を行き辿り着かなかったようだったので、自分は絶対迷わない様にとにかく夏道に忠実に進む。

途中から残雪が出てきたが、トレースゼロで人が入った気配がない。コンパスで方向だけはよく確認して、夏道ならこの方向だろうという 感で先に進み、樹林帯の中、コンパス片手に夏道と雪上のルーファイを繰り返し緊張状態が続く。

落石注意のガレ場は雪がなければ滑る急斜面。上部は雪渓で傾斜が強く怖い。怖いと思いながらアイゼン未装着で登るとだんだん傾斜が 増してきて、気合いで慎重に登り詰める。夏道がわからないので、登った後に標識を見つけると正しい道だったと安堵する。。。

とにかく夏道を辿るようにいくと、百曲がりらしきところに到着。

そこからは完全に雪となる。 百曲がりとは名前からして急登をギザギザに登るんだなと見えない夏道を想像する。

ノーアイゼンで来たが、さすがにそれまでの雪渓でのキックステップと3Lの水の重みで疲れが出てきたので、 ここからはサクサクっとアイゼンで登ろう!と思いアイゼン・ピッケルを装着する。 そこまでは山と高原地図のルートタイム通りのペースで歩いてきたので、山頂まではあと1時間少しかなと考える。

しかしここからが、もの凄く大変だった。

あそこまで雪渓を登り詰めれば支尾根かなと思って登り詰めるが、上部は急傾斜で残雪で笹が覆われ滑り落ちそう。気合いで登り尾根に出るが 様子がおかしい。うすっぺらの崖の上に出て90度切れ落ちてる。やべーと思い、慎重に滑落しないようにトラバース、木が多くてよかった。

少しコンパスの方角が見誤っていた様子。遠くに餓鬼岳らしきものとその左下に 小屋が見える。え、、、、餓鬼岳、、、遠い…あそこまでいくんかい!?

とりあえず危険地帯から逃げて、傾斜の少し落ち着いた場所へいく。地図を睨めっこしても5万分の1なので限界があるが、 山頂からの支尾根と小屋の位置を確認して進む。

下の最終水場で水3L汲んできたので、結構疲労が強く出てきた。疲れて数歩歩いては止まる、を繰り返してるとだいぶ時間がかかった。

餓鬼岳は白沢から標高差1700mもあり、ほぼ急登で登る途中でも久々に足が何度も吊った。疲労はピークだが、気合いだけは残っている。

支尾根に出るように雪渓を登るが、雪が切れ夏道が見当たらず、石楠花とハイマツの薮漕ぎ3級か4級。

全身疲れたが、ここを乗り切ればあとは小屋に向かうだけ思い、必死に支尾根に出る。きつかった。。。

支尾根に出るとがっくり。尾根は雪が少ないと考えていたが、稜線ほど雪が残っているじゃないか。そっかこの稜線は北面だったな。雪も多かったから北面だけは残雪が多いのか。 山頂直下はナイフリッジみたいに見えるのは気のせいか、、行けるのかなここ。

支尾根に出たところでテントを張れそうだったので、ここで幕営しようかと思うほど。でももしかしたら小屋までいけば、南から来た誰かが いるかもしれない。。。と期待をもって進む。とにかく日が暮れる前に着きたい。

初めての餓鬼岳で、地図もよく見てなかったので、小屋へのトラバース道の他にも山頂に抜ける道があるものと勘違いしていた。
雪陵を行くと、どんどん急傾斜になり、またもや雪渓が切れ、もう無いだろうと思っていた石楠花とハイマツに行く手を塞がれる。。。

またかよ〜!!!もうほんとに勘弁して!また藪こぎ再開するのは疲れたので、支尾根を下って幕営するか頭をよぎるが、 なんとか日暮れまでには着きそうだと判断し気合を入れ直す。そこから先は傾斜が急でもう後戻りはできない。

小屋へのトラバース道がわからない。小屋は見えてトラバースしたいが、背丈の太い薮が邪魔をしていて時間がかかりそうだ。
山頂への薮は首下の高さなので、小屋へのトラバースより楽そうだ。山頂までの急な薮を漕いで行く。

アイゼンの薮漕ぎでつい足を引っかけ、 足がもつれ薮の中で転倒。逆さに滑落することろだった・・・。もう足の疲労がピーク。

ようやく山頂に到着。絶景だった。でも心がもやもやして喜べない。

小屋は雪で埋もれていたが、稜線は雪が無い。

小屋に着くが、誰もいない。贅沢なはずの景色の中でテントを張る。

右膝のタイツが破れていて、出血している。5cmも傷が、、でも浅い傷でよかった。

南方面の稜線を眺める。槍が見える。

明日はどうしようか。。。

登っていたときは、夏道がさっぱりわからず、ひどい薮漕ぎの急傾斜、 登れても下れる自信がなかったので、ぜーったいにこの道は下らない!と思って 登ってきたのだった。

しばらく地図を見て考える。燕方面に行こうと思っていた。 でも東餓鬼岳からの下降路も雪がまだ残っているだろうし、残雪期は悪いと書いてあった。 燕岳までいけばあとはトレースを辿るだけなので考えるが、コースタイムが6h。 さらにそこに行くまでに、剣吊の辺りは稜線ではなく樹林帯をトラバースしていく道がある。 北面の樹林帯なんて確実に雪が残っている気がする。それにこの分じゃ燕までの稜線は人が入っていないだろう。

悩んだ挙げ句、またもや状態不明の道へ行くより、状態のわかる道を下った方がリスクが低いと考え、来た道を下ることに決める。

もう心身疲労がひどくて、翌日唐沢岳に行こうという気力もない。とにかく明日雪が緩んでしまう前に小屋からトラバースし、そして雪渓を下ろうと思う。

夜は胸騒ぎがして珍しく山で寝れなかった。急傾斜の薮漕ぎに急傾斜の草付き雪渓、滑落の予感がする。そもそも登りより下りの方が難しい。 あんな大変な登り、安定して下れるんだろうか。。。

今回はいつもは少し綺麗にして出てくる部屋の掃除もしていない。そういう時に限って人って死んじゃったりするんだよね〜なんて考えている。 タクシーの陽気な運ちゃんが最後の人かな。これが最期の景色かな、なんて思ったりする。

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5/18

実は今回GPSを持ってきていた。昨日も最後ヘロヘロで不安だったときに見ればよかったと思った。

ハーネス着けて、ロープを準備していつでも懸垂できるように準備して出発。

山頂から急傾斜を薮漕ぎして下るのは勘弁なので、夏道があるはずだと小屋から支尾根へ続く雪面をじっくり見る。支尾根の方に若干藪が切れている箇所があり、 目星をつけGPSと合わせると確かに夏道がありそうだ。

小屋の前から急な雪渓を数百メートルトラバースしてひとまず安心。雪が安定していて良かった。

今日はGPSの夏道通りに行こうと考える。

しかし支尾根から百曲がりへは夏道を辿ろうとするが、GPSの夏道が示す場所は昨日自分が辿った薮のみ。夏のトレースは薮で消されてしまっているようだった。

仕方ないので、薮を下降する。意外に薮の下降は楽だった。とにかく滑落しないように進む。さらに雪渓に出てGPSの夏道を辿るが、藪の中に消えて行く。 そして昨日絶対下れないと思って登り詰めた急傾斜のガレ上に導くように夏道が続いている。

昨日来た道は合ってるんじゃん!!私すごい!

なんて思いながら、そうは行ってもこの雪や薮の状態では絶対下りたくないので、雪渓の下の傾斜の緩い場所からトラバースしてコルっぽいところを目指すと、 百曲がりの登り始め、昨日の自分のトレースに出くわす。

とりあえずまたひと安心。 あとはあの雪渓を下れれば。。。

樹林帯でアイゼンを外したのでまた着けるのが面倒・・。 雪渓はアイゼン外したままで、行けるだろうと下る。雪がシャリシャリでちょっと不安定。クライムダウンで下るが長く 手も冷たくなってきた。またもや必死。アイゼン着ければよかったと後悔しながら下る・・・

雪が切れてもザレとなり滑りやすい、木を掴んでザレ場を下ると、根っこごと抜けて滑落しそうになる。石と滑りながら下降。 勢い余って木を掴んだら、イテー!!と思ったらタラの芽ゲット…。

下部も気が抜けない。急傾斜なので、登りより下りの方が歩きにくいし危険。鎖場や梯子、徒渉、最後まで緊張。

登山口に着いた。今日も生きてた・・・

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携帯が繋がらないので、もう疲れきっていたがしばらく歩く。

ここの林道歩きは楽しかった。2つの山の神様がしっかりと祀られていた。野生動物の立派な鎮魂碑もあった。古い道祖神もある。

途中の道路脇の森の中に黄金色の動物がいた。 イタチかと思ったけれど、それより大きくてシッポがフサフサのアナグマみたいな感じ、私を見て逃げて行った。

この周辺の人々は山の神様と自然の恵みを大切に生きている人々なんだな〜と感動。長野っていいとこだ。

電車時刻に間に合う様に、田んぼや麦畑を眺めながら駅へ小走りに向かう。のんびりした田舎の風景に癒された。

下山後あまりに足が疲れたので温泉へ。松本駅から浅間温泉へ。 そして帰宅し、18時開始の職場勉強会に間に合いました。。。

その翌日から2日間は、毎週のように山に行ってるにも関わらず、ひどい筋肉痛で普通に歩けない状態。きついきつい餓鬼岳でした。 夏でもキツいだろう餓鬼岳は、今度は唐沢岳か清水尾根経由でいってみたい。そしてまた同じ時期に来てみたい。


[今回の教訓]
・やはり残雪期は2万5000分の1の地図をもつべし。
・雪解け早くても北アルプス残雪期侮るな。
・やはりソロ山行は大事。しばらくソロで行ってなかったので、山でのリスクに対しての色んな意味での準備が100%からどんどん低下していた。 2人なら2分され3人なら3分割され、仲間がいる安心感とともにそれが低下する気がした。だから多数パーティこそ遭難しやすいのがよく分かる気がする。 リスクに対して一人で100%責任持てるように、たまにはソロ山行で鍛えたほうが良さそう。


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●浅間温泉 仙気の湯 280円

心身の疲労に浅間温泉







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今回出会った花

















餓鬼岳へ。

夏山だ〜と快適な気分は前半のみ

崖のトラバースも快適



梯子付きの沢歩き道



魚止の滝で一休み





最後の水場で翌日分含めて3L汲む

一応夏道外さないよう方角合わせ

トラバースした下部の雪渓

夏道は消えノートレース

しばらく道はない

  餓鬼のイメージ

しばらくノートレース

百曲がり始め、、山頂まですぐと思いきや、、、ここからがこの日の本番。。山頂と小屋が小さくみえる

なんとか危うい雪渓を抜け出しトラバースして右上の稜線を目指す

餓鬼岳と小屋が見える。ようやくひどいシャクナゲの藪こぎから抜け出し安心できるはずが、、、

餓鬼岳へ。これ行けるんか??雪安定してますように。。。

一体どこが道だったんだ???右下のやぶを漕いで出たとこ、ふりかえる。

あとは藪はないと確信してたのに!山頂直下の藪こぎ、さっきよりは辛くないが急傾斜で滑落しそうになりアイゼンで負傷。。

藪から山頂に出て、感動〜!!ついたー!日が暮れる前に。。。

餓鬼岳山頂

まだまだ燕〜槍方面が見える

絶景だけど心が落ち着かない。。

餓鬼岳小屋前

餓鬼岳と小屋

夕焼け

餓鬼岳と小屋

肉ラーメン

朝!

太陽の周りに虹が

また藪へ向かう。。。

遠くに富士山

蓮華岳方面

里の田畑も芸術作品、人の営みは本来美しいはず



タラの芽ゲット

熊さん?

立派な羽根。毛針作れる?

下山しました。

この世で一番綺麗なもの

唐子山の神

蛇が住み着いていた

常磐山の神

鳥獣供養の碑

かわいいこ!

田舎の風景に癒されて駅へ

信濃常磐に戻ってきた


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